【政府】長崎のIR区域整備計画を認定せず

令和4年4月に長崎県及びKYUSHUリゾーツジャパン株式会社から認定申請のあった特定複合観光施設区域整備計画(九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画)について、外部有識者からなる審査委員会の審査を受け、国土交通大臣は本日(令和5年12月27日)付けで、特定複合観光施設区域整備法第9条第11項の規定に基づく認定を行わないこととした。

なお、大阪のIR区域整備計画は4月に認定されている。

<「九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画」に関する特定複合観光施設区域整備計画審査委員会の見解>

1.資金調達の確実性を裏付ける根拠が十分であるとは言い難いこと

(1)要求基準において、「IR施設を設置するために必要となる資金を調達する見込みが明らかにされるなど、IR施設を確実に設置できる根拠について妥当性が認められるものでなければならない。」(特定複合観光施設区域整備法(平成30年法律第80号。以下「IR整備法」という。)第9条第11項第1号関係。基本方針第4の7(2)ア(エ)。以下「要求基準4」という。)とされている。

(2)この点、長崎県及びKYUSHUリゾーツジャパン株式会社(以下「申請者」と総称する。)から提出された資料を基に確認したところ、令和5年9月時点での出資・融資予定者は申請時から大きく変わっており、以下のような状況となっている。・一部の出資予定者から、区域整備計画の添付書類である「資金調達の確実性を裏付ける客観的な資料」等(以下「レター」という。)が提出されていない。また、多くのレターが本来提出すべき相手方とは異なる者宛となっている。・出資・融資予定者から提出されたレターは、法的拘束力がない又はそれに類するものが多いほか、出資・融資条件が過去出資・融資予定者だったが撤退した企業から提出されたレターのものと同程度に不明確な内容にとどまっている。

(3)IR事業の実施に当たっては、本来禁止されているカジノ事業が例外的に特権として認められるものであることから、IR整備法に定める極めて厳格な規定を遵守し、その責務を十全に果たすことが求められるところ、(2)のように、出資・融資予定者からのレターが揃っていないこと、レターの確約の程度(コミットメント)が十分ではないこと、令和5年9月時点での出資・融資予定者が申請時から大きく変更されていること等を総合して判断すると、今後も出資・融資予定者の変更が生じ得る懸念を払拭できないなど、資金調達の確実性を裏付ける根拠が十分であるとは言い難いことから、要求基準4に適合しないとすることが相当である。

2.カジノ事業の収益の活用によるIR事業の継続的な実施、カジノの有害な影響の排除に関する措置の適切な実施を裏付ける根拠が十分であるとは言い難いこと

(1)要求基準において、「カジノ事業の収益が設置運営事業の実施に活用されることにより、設置運営事業が一の設置運営事業者により一体的かつ継続的に行われると認められるものでなければならない。」(IR整備法第9条第11項第3号関係。基本方針第4の7(2)ウ(ア)。以下「要求基準11」という。)、「IR整備法に基づきIR事業者が自ら実施するカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行うための措置(中略)をIR事業者が適切に実施すると認められるものでなければならない。」(同号関係。基本方針第4の7(2)ウ(オ)。以下「要求基準15」という。)とされている。

(2)この点、申請者から提出された資料を基に確認したところ、以下のような状況となっている。・CASINOSAUSTRIAINTERNATIONAL(以下「CAI」という。)以外の出資予定者の中にはIRの設置運営の実績・ノウハウを有する企業を確認することができない。・カジノ施設の設置運営の実績・ノウハウを有するCAIに関しても、IRの設置運営の実績については十分に確認できない。また、出資割合が極めて小さく、レターの確約の程度が十分ではないことから、CAIのIR事業への資本的関与が十分であるとは言い難い。・以上に加え、IRの経営経験のある者を役員とするとともに、資本的関与が十分とは言い難いCAI等からノウハウ等の提供を受けるというだけでは、IR事業者は自らがカジノを運営し有害な影響の排除に関する措置を適切に実施しなければならないことを踏まえると、カジノを含むIR事業が適切かつ継続的に実施されると見込まれるだけの根拠に乏しい。・出資額の多くを投資会社等からのものが占めることとなり、カジノ事業の収益を活用したIR事業への還元やカジノの有害な影響の排除に関する措置と、投資家への利益還元のいずれが優先されるかについての懸念を払拭できない。

(3)IR事業の実施に当たっては、本来禁止されているカジノ事業が例外的に特権として認められるものであることから、IR整備法に定める極めて厳格な規定を遵守し、その責務を十全に果たすことが求められるところ、(2)を総合して判断すると、カジノ事業の収益の活用によるIR事業の継続的な実施(要求基準11)及びカジノの有害な影響の排除に関する措置の適切な実施(要求基準15)のいずれについても裏付けとなる根拠が十分であるとは言い難いことから、これらの基準に適合しないとすることが相当である。